本当は存在しない?
暗黒物質

M. ミルグロム
200211

日経サイエンス 2002年11月号

10ページ
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宇宙には現在の観測技術には引っかからない暗黒物質が満ちている。その質量は宇宙の全物質の96%にも及ぶ。もしこうした暗黒物質を想定せず,目に見える星や電波などで観測できる天体だけしか存在しないとすると,銀河や銀河団は自らの重力が足りず,バラバラになってしまう。これが暗黒物質論だ。
 この結論は現在の物理法則が宇宙ですべて成り立っていることを前提にしたものだが,数多くの研究が続けられたにもかかわらず,暗黒物質の正体は一向に見えてこない。それならいっそのこと,現在の物理法則がある条件下では成り立っていないとしたらどうか。著者のミルグロムはこんな発想の大転換を試みた。
 「力は加速度に比例する」という有名なニュートンの第2法則を,極めて小さな加速度の下では「加速度の2乗に比例する」とした修正ニュートン力学を提唱したのだ。不思議なことにこのように修正を施すと,暗黒物質の存在を想定しなくても驚くほど矛盾なくさまざまな観測結果を説明できる。そのうえ修正ニュートン力学が予想したいくつもの現象も,その後の観測で確認された。