人はどのように時間を感じるのか


200212

日経サイエンス 2002年12月号

47ページ
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コンテンツ価格: 200


収録記事
2002年12月号「生物が持つ4つの時計」K. ライト
2011年8月号「見ないで光を感じる眼 体内時計をきざむ“第3の光受容細胞”」I. プロヴェンシオ
2000年6月号「生物時計を動かす遺伝子」M. W. ヤング
2010年12月号「なぜ永遠に生きられないのか」T. カークウッド
2002年12月号「心の時間」A. R. ダマジオ
2002年12月号「ところ変われば…… 時間の社会学」C. エゼル

 生きものは環境に適応しながら進化してきた。環境は空間ばかりではない。時間も大切な環境である。とりわけ,1日と1年,加えて月の満ち干まで持つ,多彩な周期現象に彩られた地球の時間環境の下では,それらに合わせて生命活動を調整するための内的な時間装置を備えることが,生き延びるための必須条件であった。こうしてマクロコスモス(宇宙)の外なる時間とミクロコスモス(生体)の内なる時間とが,呼応し合い,調和し合って今日の生命圏を形成してきたのである。
 今回のセットには,生きもの,とりわけ人が持つこうした内的時間装置の研究が集められていて,脳内の視交叉上核にある生物時計や,さまざまな時間遺伝子の話が,手際よくまとめられている。興味深いのは,眼球に非視覚性光受容システムがあり,たとえ物は見えなくとも,そのシステムによって外界の明暗の変化をとらえて体内リズムを調整している可能性がある,とした最近の研究報告である(「見ないで光を感じる眼」)。耳が聴覚と平衡感覚という異質な2つの機能を担っているように,眼も視覚細胞と光受容器という,本来は異質な2つの感覚器が合体したものではないか,というわけだ。生物進化の観点からも面白く,かつ説得力のある仮説である。
 最後に文化的な時間意識の話題も取り上げられている。江戸時代,寺社の時鐘は都市部では有料で,住民は鐘銭を徴収されたようだ。まさに「時は金なり」である。このような歴史を重ねながら,外なる時間が社会に浸透し,内なる時間は忘れられていった。しかし今日,健康のためには内なる時間がいかに重要であるかが,改めて見直され始めている。その見直しにも役に立つであろう。
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