ナノエレクトロニクスの落とし穴
静電気

S. H. ボールドマン
200301

日経サイエンス 2003年1月号

10ページ
( 2.2MB )
コンテンツ価格: 700

現代のマイクロエレクトロニクス部品は静電気放電(ESD)に非常に敏感で,半導体チップに手で触れただけでも壊れてしまうことがある。さまざまな静電気対策が工夫されてきたが,回路のサイズがマイクロからナノへと微細化するに従い,対策も困難を増している。この困難を何とかして乗り切らないと,小型化や高性能化は壁に突き当たる。
 静電気放電によって電子回路がダメになってしまうのはなぜか。主犯は放電電流によって生じる熱だ。これによって電子回路の素材が溶けてしまう。また,不純物添加領域の正確なパターンが台無しになり,素子がうまく機能しなくなってしまう。熱のほか,絶縁破壊や「電子なだれ」,電流集中などと呼ぶ現象によって回路が傷つく。このほかフォトマスクや磁気ヘッドなどでは特有の静電気障害が生じる。
 対策としては,より丈夫な材料を使うほか,さまざまな回路をチップ上に付け加えて放電を能動素子からそらす方法がある。ただし,トランジスタの種類や半導体の組成によっては制限もあり,万能薬といえる対処法はない。高速動作に優れたガリウムヒ素(GaAs)チップなどでは,より進んだ静電気対策が求められる。