南極の氷が語る海面上昇のシナリオ

R. A. バインドシェードラー
C. R. ベントレー
200303

日経サイエンス 2003年3月号

8ページ
( 2.2MB )
コンテンツ価格: 600

1万2000年ほど前,最後の氷河期(最終氷期)から脱した地球では,タイタニック号に衝突したのと同じぐらいの大きさの氷山が,巨大艦隊のように次々と北大西洋に集結した。当時,欧州と北米の半分を厚く覆っていた巨大な氷床から,数多くの氷山が分離して海に流れ込んでいた。海面は水中に沈んだ氷山の分だけ高くなるので,数十年間にわたって毎年1m以上のペースで海面が上昇し続けた。
 こうして北半球の氷は解けたが,南極大陸の氷はほぼ完全に残り,現在では地球上の氷の90%を占めている。だが,過去30年間に行われた何十もの研究によって,南極大陸の西半球側である西南極を覆っている氷(西南極氷床)が,北半球と同様に消滅する可能性があることがわかり,警告の声があがってきた。この氷床には300万km3を超える淡水が氷として貯留されている。これがもし完全に崩壊して海に流れこんだら,地球の海面は約5m上昇するだろう。そうなれば海岸沿いの多数の低地が水没するため,20億人近い人々が内陸へ避難しなくてはならない。