薬で骨を若返らせる
骨粗鬆症の最新治療

C. J. ローゼン
200307

日経サイエンス 2003年7月号

10ページ
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骨粗鬆症に悩む米国人は約1000万人にのぼり,閉経期を過ぎた女性に特に多い。日本人の骨粗鬆症患者は推定800万?1000万人と言われている。米国と同様,女性が8割を占め,閉経期にさしかかる50歳を境に急速に増加する。50代では4人に1人,70代ではほぼ半数が骨粗鬆症と診断される。
 閉経後の女性の実に半数が骨粗鬆症による骨折に苦しむ。しかし幸いなことに,患者をとり巻く状況は明るくなってきた。失われた骨を修復して,骨折のリスクを大きく減らす薬剤が使われ始めている。また,細胞および分子レベルで得られた最新の知見によれば,効果の期待できる新しい治療法のアイデアが目白押しだ。
 ほんの10年前まで,骨粗鬆症の治療法といえばカルシウム剤の摂取や鎮痛剤の使用がほとんどで,閉経後の女性に対してはエストロゲン(卵胞ホルモン)補充療法が一般的だった。これらは効き目はあるものの完全とはいえない治療法だ。エストロゲン補充療法には,心臓発作や脳卒中,乳ガン,血栓形成のリスクを高めるという副作用がある。しかし今日では,服用開始から1年以内に骨折のリスクを約70%減少させるような薬が何種類も売られている。
 診断方法も劇的に改善された。つい最近まで,診断の唯一の手がかりは骨折だった。しかし現在では,二重エネルギーX線吸収法(DEXAあるいはDXA,デキサ法)という優れた検査法によって,骨折しやすい部位の骨密度を測定できるようになった。最近の研究では,骨粗鬆症の遺伝的な側面も明らかになってきた。長い間,骨粗鬆症は「外傷」とみなされていた。数十年間をかけて骨がすり減り,ひびが入った結果,骨折したり痛みが生じると考えられていたのだ。しかし最近の遺伝学的な研究から,骨量(ひいては骨折のリスク)に複数の遺伝子が関与することがわかった。研究データでは,骨量の個人差の最大約70%が遺伝的素因の差として説明できるとしている。もちろん食事や運動にも骨粗鬆症を防ぐ一定の効果はある。
 骨量以外にも,骨粗鬆症にかかわる遺伝子はたくさんありそうだ。骨粗鬆症を進行させる遺伝子変異が見つかれば,骨粗鬆症の発症リスクを評価したり,遺伝子変異の作用を押さえ込む薬剤の開発につながる可能性もある。