魚が消える?
乱獲で崩れる食物連鎖

D. ポーリー
R. ワトソン
200310

日経サイエンス 2003年10月号

7ページ
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カナダ南東部の大西洋沿岸に広がる比較的浅い海ジョージバンクはかつて水産資源の宝庫だった。17世紀には,タラやサケ,シマスズキ,チョウザメの大群が漁船を取り囲んだが,今ではほとんど姿を見かけない。
 こうした商業的に価値の高い魚の漁獲量は減り続け,多くが子孫を残す前に水揚げされるため,小型化している。こうした現象は北大西洋だけでなく世界中で起きている。
 その主な原因は人間の手による乱獲だ。例えば,カナダ政府は補助金を出し,国内漁船の大型化と装備の近代化を進めた結果,大西洋側では漁獲高が激減した。
 また私たちは1つの統計モデルを考案し,水深や緯度の似通った世界各地の漁場の中から漁獲高が著しく違う水域を調べられるようになった。これによって,中国は40%近くも多めに漁獲高を報告している可能性が高いとわかった。1980年代末に世界の漁獲高は減少し始めたが,虚偽の報告をしている国の存在を考えると,かつてないペースで減少している可能性がある。
 特に気になるのが漁獲の中心が大型の肉食魚から小型魚に移っていることだ。食物連鎖の中の栄養段階を指標に見ると,北大西洋やアルゼンチンのパタゴニア海岸沖,南極大陸の周辺,アラビア海,アフリカやオーストラリアの周辺の一部海域で1次以上も減っていた。例えば,カナダのニューファンドランド西岸沖では,栄養段階の平均値は1957年には3.65あったが,2000年には2.6まで低下,水揚げされる魚の平均体長はその間に1mも小さくなった。
 こうした難題を解決する1つの手段として,生態系に基づく水産資源の管理が挙げられる。底引き網のような海底を破壊する漁具の段階的な廃止,漁業の影響を軽減するための海洋保護区・禁漁区の指定などだ。特に重要なのが禁漁区の指定だろう。こうした対策をとることで,初めて漁業の持続が可能になる。