携帯電話を追跡する賢いアンテナ

M. クーパー
200310

日経サイエンス 2003年10月号

9ページ
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たいていの人が携帯電話を持ち歩くモバイル社会になった。しかし,限られた電波資源の中で混信のない快適な通話を確保するには工夫がいる。「アダプティブアレイ」と呼ぶ新方式のアンテナがその答えだ。移動する個々の携帯電話ユーザーに焦点を絞って電波を送る。目的のユーザーとの通信を最適化すると同時に,他ユーザーとの混信を最小限に抑えることが可能だ。
 最も単純なアンテナはダイポールと呼ばれ,特定の長さの金属棒でできている。ダイポールアンテナの電波は全方位に伝わっていく。これに対し,複数のアンテナを並べたアレイアンテナでは,電波をビーム状に絞ることができる。
 これに信号処理用のプロセッサーを組み合わせ,発信源を追跡できるようにしたのがアダプティブアレイ・アンテナだ。演算処理によって受信した信号を強めることもできるので,混信を最小限に抑えられる。また,鋭いビームを生かすことで,同じ周波数の電波を複数のユーザーが混信なしに利用することも可能になる。
 限られた周波数帯を最大限に活用しつつ,高品質の通信サービスが可能になるわけだ。特に大量の情報を送受信するデータ通信に有効なので,無線インターネットの基軸になっていくだろう。
 日本をはじめ,アジア地域での実用化が先行している。欧米では著者が設立したアレイコム社のほか,ナビニ・ネットワークス社,ルーセント・テクノロジーズ社,ノーテル・ネットワークス社などがこの“賢いアンテナ”の開発に取り組んでいる。