特集:脳力増強の科学
究極の自己改善を目指して

G. スティックス
200312

日経サイエンス 2003年12月号

2ページ
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 1990年代は研究プロジェクト「脳の10年」が遂行された時代だった。多くの進展があった一方で,非常に大きな課題がほとんど手つかずのまま残った。「意識とは何か」という問いだ。この謎解きにはあと100年かかるかもしれない。
 「脳の10年」は本当の大問題に答えを出すには早すぎたが,神経に関する研究が世界中で精力的に行われた結果,脳に対する新しい見方と,脳を強化する新しい手法がもたらされた。
 最も重要なことは,脳が以前に考えられていたよりもずっと変化しやすいものだとわかったことだ。ニューロン新生を促す分子を慎重に再活性化してやれば,アルツハイマー病やパーキンソン病で起こる神経細胞の死滅に対抗できるかもしれない。
 過去10年に登場した画期的な技術に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)がある。いろいろな課題に取り組んでいる脳の詳細な画像が得られる。ちょっとした読心術さえ提供してくれるかもしれない。この技術と遺伝子診断を組み合わせることによって,脳機能障害を正確に診断できるようになる。
 「脳の10年」は華々しいファンファーレを欠いたまま終わったように見えるが,臨床医学に大きな意味を持つ次の研究がすでに始まっている。