ガン治療にウイルスを活かす

D. M. ネテルベック
D. T. キュリエル
200401

日経サイエンス 2004年1月号

10ページ
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さまざまな病気を引き起こすウイルスだが,うまく手なずけるとガンを効果的に攻撃する新しい治療法に道が開ける。腫瘍細胞だけで増殖するウイルスを利用する「ウイルス療法(virotherapy)」だ。その効果を見極める臨床試験が進んでいる。
 ウイルスをガン細胞だけに選択的に感染させて殺す。現在,ガン細胞には効率よく感染するが正常細胞には影響を与えないようなウイルス(特にアデノウイルス)を開発するため,さまざまな方法が試されている。
 ウイルス療法の標的指向性を高めるには,大きく分けて2つのアプローチがある。1つは「遺伝子導入の標的化」で,ガン細胞に特異的に感染(遺伝子導入)できるようにウイルスを改良する。もう1つは「転写活性の標的化」で,ウイルスが運ぶ遺伝子がガン細胞でのみ活性化される(転写される)ように改良する。
 従来の化学療法剤に対する感受性を高めるような遺伝子をガン細胞に選択的に導入するという考え方や,ある種の酵素を作り出す遺伝子をウイルスに組み込んでガン細胞で発現させ,その酵素によって無害な化学物質を強い毒性を発揮する化学療法剤に変えるといったやり方もある。
 ウイルスに蛍光物質や放射性核種の標識をつけて利用することも考えられている。これを投与するとガン細胞のところに集まってくる。将来は微小なガンの転移巣を検出する画像診断が可能になるだろう。