動き始めた人工筋肉

S. アシュレー(SCIENTIFC AMERICAN編集部)
200402

日経サイエンス 2004年2月号

10ページ
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電気に反応して変形する電場応答性高分子(EAP:Electroactive Polymer)が注目を集めている。近年になって,応答性に優れた材料が登場した。モーターに代わる動力源に実用化しそうだ。
 電気によって長さや体積が大きく変化し,しかも軽い物質があれば,まったく新しいアクチュエーター(動力を生み出す装置)ができる。広く利用されている電気モーターは大きくて重いが,新アクチュエーターはモーターに代わるだけでなく,より小型の装置にも利用できる可能性がある。
 この分野では,カリフォルニア州にあるSRIインターナショナルの研究が有望視されている。誘電エラストマーと呼ぶタイプの高分子について,アクチュエーターとして使える性能を達成した。
 誘電エラストマーを強い電場の中に置くと,電場の方向に収縮し,電場と垂直な方向には膨張する。この変形力は「マクスウェル応力」と呼ばれている。新型アクチュエーターは帯電した2枚の電極板の間に誘電体を挟んだもので,一言でいうとゴムのような弾性を持つコンデンサーだ。これに電圧をかけると,一方の電極にはプラスの電荷が,反対側の電極にはマイナスの電荷が蓄えられる。電極間に引力が生じ,この力によって誘電体が押しつぶされ,面方向に膨張する。
 アクチュエーターだけでなく,センサーや発電機などへの応用も考えられる。日本では大阪府池田市にあるイーメックス(産業技術総合研究所系のベンチャー企業)が,この「人工筋肉」を組み込んだお魚ロボット「人工筋魚」を商品化している。