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私たちは空間も時間も連続したものだと考えているが,実は大間違いかもしれない。相対論と量子力学の統合を目指す新理論によると,「時空の原子」が存在する。アインシュタインが果たせなかった難問解決の道筋が見えてきた。
空間の構造を非常に小さなスケールで理解するには,重力の量子論が必要になる。空間に重力が関係してくるのは,時空の歪みから重力が生じることがアインシュタインの一般相対性理論によって示されているからだ。
量子力学と一般相対論の基本原理を注意深く組み合わせることで,「ループ量子重力理論」が生まれた。この理論によると,空間は個別の小さな塊からできていて,最小の塊の体積はおよそ1立方プランク長(10-99cm3)だ。時間の進みは飛び飛びで,その最小単位はおよそ1プランク秒(10-43秒)となる。また,空間がとりうる量子状態は点と線からなる「スピンネットワーク」という抽象的な図に,時空の量子状態は同様の「スピンフォーム」という図に表現される。
ループ量子重力理論は純粋に理論的な研究の成果だが,空理空論ではなく,実際に検証できる可能性がある。例えば,空間の構造が離散的だとすると,そこを伝わる光のスピードは波長によってわずかに異なる。はるか遠くの宇宙で発生したガンマ線バーストの光が,波長によってわずかな時間差をもって地球に届くことが検出されれば,理論を実証したことになる。この観測が可能な天文衛星が計画されており,時空の離散的構造から生まれる効果が近い将来に確かめられるだろう。