遺伝暗号
巧みに進化した情報システム

S. J. フリーランド
L. D. ハースト
200407

日経サイエンス 2004年7月号

10ページ
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 2003年4月14日,ヒトゲノムの解読終了が宣言された。ヒトゲノムは長いDNAからなり,そこには30億の塩基対がある。この塩基の配列に,ヒトという生物をつくりあげる方法が記されている。DNAはヌクレオチドがずらりと連なったものだ。ヌクレオチドには付いている塩基の種類によって,4種類がある。このたった4つがDNAの“文字”に相当する。二重らせんに暗号として書かれている情報は,何らかのルールに従って解読されなければならない。
 暗号のプログラミングが実は非常に洗練されたものであるとわかったのは,つい最近になってからだ。なぜ自然がこのような基本的ルールを選択したのか,そしてなぜそれらのルールがおよそ30億年もの間,自然淘汰を生き延びてきたのか。そうした疑問に対する答えがしだいに明らかになってきた。暗号ルールは生物が進化する速度を高める一方で,タンパク質合成の過程で悲惨な間違いが起こらないように個体を守っているといってよい。DNAの分子構造の解明という「始まり」からさらにさかのぼり,生命の基礎となる暗号という本当の原点を追究することによって,ポストゲノム時代に残された難問を解決する手がかりも見つかる。