ナノ時代に入った半導体チップ

G. D. ハッチェソン
200407

日経サイエンス 2004年7月号

8ページ
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 半導体チップにナノテクノロジーが応用されるのは,一見遠い将来のことのようだが,実はそうではない。トランジスタの心臓部であるゲートの長さは2000年に100ナノメートルを切り,その後さらに短くなっている。微細化が進むほどトランジスタの動作は速くなり,コストは下がる。半導体が年々安く,速くなっているのは,チップ製造の各工程でたゆまぬ技術革新があったおかげだ。
 例えばシリコン基板については,最近,中に絶縁体を埋めこんだり,シリコンの結晶をひずませたりすることでチップの動作速度を速くする手法が開発された。IBMをはじめ各メーカーが製品の製造に用いている。
 この基板の表面にトランジスタや配線を描く手法としては,今よりさらに1ケタ細かい加工ができる極紫外光を使ったリソグラフィーが注目されている。ただしこの波長領域の光は非常に吸収されやすいため従来のレンズなどが使えず,まったく新しい装置が必要になる。まだ研究開発の段階だ。
 エッチングによって配線などを作った後に洗浄する過程では,超臨界流体と呼ばれる粘性の無い液体が威力を発揮している。細かいすき間に入り込んだクズも確実に取り去り,しかも洗浄後は簡単に蒸発して残らない。
 半導体がここまで発展したきたのは,40年に渡る,こうした地道な技術革新の積み重ねだ。ナノテクノロジーの進展が電子工学を根本的に変えるとの見方もあるが,その時も半導体産業は健在だろう。