宇宙旅行を目指す米国の民間ロケット

J. C. ホーバス
200407

日経サイエンス 2004年7月号

7ページ
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 1860年代まで,米国東部と西部は広大な未開の荒野に隔てられ,東西は分断されていた。とりわけ大きな壁は高く険しいシエラネバダ山脈だ。ある時,カリフォルニア州の4人の商人は,誰もが不可能と考えた計画に向けて資金集めを始めた。シエラネバダ山脈を越えて東西を結ぶ鉄道を建設するというのだ。新聞記者や投資家,一流の技術者や政治家たちに物笑いの種にされながらも,この計画は技術的な難題を克服し,ついに成就した。
 現代の起業家たちも大陸横断鉄道に匹敵するプロジェクトに挑んでいる。地球をめぐる低軌道(高度350?1400kmの軌道)への安くて確実な輸送手段を実現することだ。だが,彼らの前にも高く険しい難題が待ち構えている。鉄道敷設の場合と同様,まだ影も形もない市場を創造しなくてはならない。しかもコストをあまりかけずにだ。お客が宇宙に気軽に出かけられるよう,安全な輸送機を開発する必要もある。その上,発展途上の法規制の壁をも克服しなければならない。
 1995年,こうした“小さな宇宙産業”が一気に活気づいた。この年,サブオービタル(地球を周回せずに落下して戻ってくる高度100km以下の軌道)へ打ち上げる再使用可能型ロケットの開発を促そうと,賞金1000万ドルのロケットコンペ「X賞」が発表されたからだ。賞金を手にするのは,次のミッションを最初に達成したチームだ。まず乗員を3人乗せてサブオービタル高度に到達後,地球に帰還する。それから14日以内に,備品の交換を機体重量の10%未満に抑えて,再度同じ飛行を繰り返す。これまでに20社以上が正式にエントリーし,10数社が機体を製作中だ。近日中に受賞チームが出る可能性は高い(ひょっとするとこの記事が出る前かもしれない)。