時の始まりはいつだったのか
ビッグバン以前の宇宙

G. ヴェネツィアーノ
200408

日経サイエンス 2004年8月号

14ページ
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 宇宙はビッグバンによって始まり,その前には何も存在しなかった。時間というものも意味をなさなかった──現代の宇宙によると,宇宙誕生のシナリオはこんな風になっている。だが,本当にそうだろうか?ビッグバン以前には何があったのか?こんな素朴な疑問に答える,新たな宇宙論が浮上してきた。ビッグバンより前にも宇宙は存在し,宇宙の時計は果てしない過去から無限の未来まで,永遠の時を刻み続けているというのだ。
 著者が描く宇宙の歴史は大胆だ。宇宙は最初,希薄なガスがただよう空間だったが,やがて一部が集まって塊となり,ブラックホールを形成。その中の密度が極限に達した時にビッグバンが起きて,宇宙が形成されたという。この説が正しければ,私たちが住むこの宇宙は,巨大なブラックホールの中にあることになる。
 一方で,もう一つの候補であるエキピロティック宇宙論によれば,私たちの宇宙は,高次元時空に浮かぶ3次元の膜だ。この膜は平行して存在する別の膜に時々ぶつかっては離れていく。ぶつかった時にインフレーションが起きるという。これが正しい場合も,ビッグバン以前にも宇宙は存在していたことになる。
 どの説が正しいか,観測によって決着づける方法はないのだろうか。真剣に模索が始まっている。