地下攻撃核ミサイルに異議あり

M. レビ
200501

日経サイエンス 2005年1月号

8ページ
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 米軍の潜在敵国は1991年に勃発した湾岸戦争から重要な教訓を学んだ。当時,イラクの軍事施設はスマート爆弾によってピンポイント爆撃され,地上にある軍事施設は米軍の空爆に対して極めて脆弱だった。爆撃から生き残るには基地や武器貯蔵庫を強化コンクリートで作られた地下バンカーか,もしくは硬い岩山の内部に設置しなければならない。
 この戦争の後,米国の軍事戦略家は地中深くに隠蔽された堅牢な攻撃目標を破壊する方法について検討を進めていた。彼らは,地下バンカーや地下武器貯蔵庫への攻撃を成功させるのが難しいことを十分に認識していたようだ。さらに恐ろしいことは,地下爆撃によって,地中に隠蔽された化学剤や生物剤を迂闊にも周辺地域に撒き散らしてしまい,致命的な結果を招きかねないという問題だ。
 国防戦略家が検討した1つの解決策は,爆発力を抑えた地中貫通型の核弾頭を配備することだ。この特殊弾頭は地中に貫通した後に爆発することで破壊力を増し,そのうえ放射性降下物(死の灰)の放出を少なくするものと期待された。原理的には,化学・生物剤がバンカーから漏れ出して近隣住民に危害を及ぼす前に,爆発による熱と放射線によって破壊できる。
 この「核バンカーバスター」に関する議論が過熱した結果,兵器としての軍事的長所が導入に伴う政治・外交面のマイナスを補うに足るかどうか,十分には議論されていない。通常兵器でもほぼ同じ目的を達成できるだろうし,付随する政治・人道上のリスクのみならず軍事上のリスクも大幅に削減できるだろう。
 米国が最終的に核バンカーバスターの開発を選択するのであれば,希望的観測に基づくのではなく,しっかりと現実を見据えて決断しなければならない。