アラスカ北極圏にいた恐竜たち

A. R. フィオリロ
200503

日経サイエンス 2005年3月号

9ページ
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 過去20年の調査研究によって,いまから7500万?7000万年前のアラスカに8種類の恐竜が生息していたことが明らかになった。これらの恐竜は寒くて暗い長い冬を生き抜くことができるよう,うまく適応していたに違いない。それを示す手がかりが見つかりつつある。
 8種類のうち4種は植物食の恐竜,他の4種は獣脚類と呼ばれる肉食恐竜だ。いずれも年代は白亜紀(1億4500万?6500万年前)にさかのぼるが,ほとんどは白亜紀の終わり近く,7500万?7000万年前に集中している。これは有名な恐竜大絶滅のわずか500万年ほど前にあたる。
 当時は確かに地球全体が現在よりも暖かかったものの,高緯度地方の気候は,雪の降る寒い冬や数カ月間に及ぶ暗闇の季節など,やはり厳しいものだった。彼らがどうやって生き延びていたのか,完全には説明がついていない。一部の恐竜は,餌をあまり食べなくても生きていけるよう,代謝率を下げるようなことをしていたのだろう。
 何らかの適応をしていたと思われる最も明確な例は小型の肉食恐竜トロオドン(Troodon)だ。彼らは例外的に大きな目を持っている。このため暗い環境のなかで他の生物との競争上で有利になり,極北の生態系で最も優勢な捕食者になったと考えられる。北極圏のトロオドンは南で見つかったものに比べて大きさが2倍近くもある。
 これらアラスカの恐竜は他の恐竜たちと同時に滅んだのだろうか。アラスカには白亜期末の恐竜絶滅と同時代の地層が残っている。ちょうどその時代の恐竜化石はまだ見つかっていないが,今後の調査研究で発掘されれば,恐竜絶滅に新たな光を当てることができるに違いない。