ビッグバンをめぐる6つの誤解

C. H. ラインウィーバー
T. M. デイビス
200506

日経サイエンス 2005年6月号

12ページ
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コンテンツ価格: 700

 ビッグバンとともに宇宙が誕生したとき,どこかで何かが爆発したのだろうか?そんな風に考える人が多いが,あいにく大間違いだ。そもそも宇宙が膨張するとは,いったい何を意味しているのだろう。
 宇宙膨張は現代科学を支える基本的な概念の1つだが,最もひどい誤解を受けている概念の代表例でもある。誤解を避けるには,「ビッグバン」という言葉にとらわれすぎないことが重要だ。ビッグバンは,宇宙の中心で破裂して周囲の空っぽの空間に物体をまきちらした爆弾ではなかった。むしろ,至る所で起こった「空間そのものの爆発」であり,風船の表面全体が伸びていくようなものだった。
 「空間そのものの膨張」と「空間の中で起こった膨張」の違いはささいなものに思えるかもしれないが,宇宙の大きさや銀河が離れていく速度,現在の宇宙で起こっていると考えられる加速膨張の本質などは,両者でまったく異なるものとなる。
 例えば,「銀河は光よりも速く後退できるか?」という問いに対する答えは実はイエスだ。「超光速で遠ざかる銀河を見ることができるか」。この答えもイエス。「銀河の赤方偏移はなぜ起こるのか」。ドップラー効果によると答えた人は間違いだ。「観測可能な宇宙の大きさはどれくらいか」。宇宙の年齢は140億年だから140億光年,と答えたくなるかもしれないが,実は460億光年が正解だ。
 厳密にいえば,ビッグバンモデルはビッグバンそのものに関してはほとんど何も語っていない。ビッグバンの後に起きたことを記述しているだけだ。