農耕文明が温暖化を招いた?

W. F. ラディマン
200506

日経サイエンス 2005年6月号

9ページ
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人間の行動が気候に影響を及ぼし温暖化を引き起こしたのは20世紀のこととされている。産業化によって石炭を燃やす工場や発電所が作られ,二酸化炭素(CO2)その他の温暖化ガスが大気中に放出し始め,やがて自動車もこれに拍車をかけた。
 ところがこの定説に異議を唱える大胆な仮説が登場した。著者ラディマンは,人間活動による温暖化ガスの放出は工業化社会が誕生するはるか以前,農業とともに始まったと主張する。南極の氷床コアのデータによると,周期的変化では低下傾向にあったはずのCO2濃度が8000年前から急速に上昇し始めたと指摘。同じく5000年前には,もうひとつの温暖化ガスであるメタンも同様に増大した。この2つの年代は,人類が森林伐採および灌漑を始めた時期に重なり,大規模な農耕と温暖化ガスの増加を結びつける証拠としている。
 さらに,人間の活動が地球の寒冷化を防いだとも考えられる。農業やその後の産業化による温暖化ガスの放出がなかったと仮定してシミュレーションをすると,現在の地球の気温は今よりも平均2℃低下する。20世紀に起こった急速な温暖化の原因が化石燃料の大量消費にあることは間違いないが,人類の祖先が始めたごく初期の農業活動も温暖化ガスの放出に一役買っていた可能性がある。