燃料電池車
未来への道

S. アシュレー(Scientific American編集部)
200506

日経サイエンス 2005年6月号

9ページ
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究極の低公害車と言われる燃料電池車の試験走行が始まっている。かつてに比べてその性能と信頼性は大幅にアップした。次の焦点はガソリン車に匹敵する実用車になれるかどうか。燃料電池車は正念場にさしかかる。
 10年にわたる集中的な研究開発の結果,世界中の自動車メーカーは走行できる燃料電池車の初の試験車製作にまでこぎつけた。ホンダのFCXの最新車20台とフォードのフォーカスFCV燃料電池駆動式コンパクト・カー30台が,まもなくハイウェイへと繰り出す予定だ。ゼネラル・モータースは,13台の燃料電池車をニューヨーク市街での評価試験用に提供予定としている。ダイムラークライスラー製の燃料電池バス30台は既にヨーロッパの10都市で運行中であり,北京とパースでも3台がまもなく運行開始する。
 排ガス規制の強化や,差し迫る石油不足の予測,温室効果ガスによる地球温暖化の危機に直面した自動車業界と各国政府は,過去10年間に数百億ドルを投資し,完成された内燃エンジンに取って代わるクリーンで効率のよい推進技術を実用化しようとしている。
 しかし批評家は,業界が環境に優しい車を本気で作ろうとしているのか,そして現在の研究開発が近い将来の実用化に十分な額なのかどうか,疑問を呈している。
 自動車メーカーや部品メーカーが何とかして解決しなければならない課題は多い。搭載可能な水素貯蔵量を大幅に引き上げること,燃料電池駆動系の価格を現在の100分の1に引き下げること,動力源の寿命を5倍に伸ばすこと,そしてSUVなどの大型車用にエネルギー出力を向上することだ。最終的に燃料電池車を運用するには,水素燃料補給インフラストラクチャー(社会基盤)が世界中の給油所に取って代わる必要がある。一部の自動車メーカーからは,近い将来実現できるという確信はないという本音が漏れる。