ブラックホールを製造する

B. J. カー
S. B. ギディングズ
200508

日経サイエンス 2005年8月号

9ページ
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粒子加速器を使って地上に小さなブラックホールを作り出そう──。理論物理学の研究から,びっくりするような構想が生まれてきた。「隠れた次元」の存在など,時空の謎に迫る壮大な実験だ。
 ブラックホールといえば,宇宙船から星に至るまであらゆるものをのみ込んでしまう巨大な怪物を思い浮かべるのが普通だろう。しかし,理論的にはさまざまな大きさのものが考えられ,素粒子より小さなものもありえる。微小ブラックホールは量子効果によって壊れ,特に小さなものは生まれてすぐに爆発・消滅する。
 ビッグバンの初期段階には小型のブラックホールができた可能性があり,その一部が現在の宇宙で爆発するのを観測できるかもしれない。
 最近,粒子の衝突によって微小ブラックホールが生じる可能性があると考えられるようになった。生成には膨大なエネルギーが必要だとされてきたが,もし空間に適当な余剰次元が存在するならエネルギーの閾値はずっと小さくなる。その場合,欧州合同原子核研究機構(CERN)が建設中の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でブラックホールを作れるかもしれないし,高エネルギーの宇宙線が上層大気に衝突する際にもブラックホールができている可能性がある。
 こうした微小ブラックホールは「ひも理論」が予言する余剰次元の存在を探る手立てになる。微小ブラックホールの存在そのものが,余剰次元存在の確証となるし,微小ブラックホールの特性を調べることで,そうした余剰次元の広がりを探究できるようになる。