動物はいつ左右対称になったのか

D. J. ボッティエ
200511

日経サイエンス 2005年11月号

8ページ
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 2002年,私たちは,地球上で最古の左右相称(対象)動物の化石を探しに中国貴州省へやって来た。左右相称動物とは肢や体の器官が中心線をはさんで対称になっている動物のことで,その出現は生命の歴史の中で重要な段階を示す。最初の多細胞動物は左右相称ではなく,非対称形の水生生物のカイメンだった。カイメンは自ら周囲に水流を作り出し,その流れに含まれる食物をこしとって栄養分にしていた。これらに比べて放射相称形の水生生物である刺胞動物(クラゲなど)はもう少し複雑だ。毒を出す刺細胞で獲物を捕える。線虫から人間にいたるその他すべての動物は左右相称動物だ。左右相称動物は生活史のどこかで一度は必ず左右相称性を見せる。さらに左右相称動物は体が3つの胚葉に分かれていて,一般に口と腸管と肛門をもつことも特徴だ。大多数の左右相称動物が出現したのは5億4200万年前に始まった「カンブリア爆発」のころだが,その最古の化石は直前の約5億5000万年前のものとされてきた。当時(カンブリア爆発よりも前)の化石はほとんどないため,なにがこの“爆発”をもたらしたかについて検証することはできない。また,本当に爆発と言えるような出来事があったのか,あるいはそう見えるだけなのかわからない。カンブリア爆発以前の動物たちはその痕跡をほとんど残していないからだ。しかし,私たちの貴州省での発掘を始めとするこの5?6年間の研究で,従来の定説は覆された。複雑な動物が出現したのは,カンブリア爆発より少なくとも5000万年前だったことが示唆されたのだ。私たちは貴州省で,最古の左右相称動物「ベルナニマルキュラ」の化石を発見した。