巨大津波の襲来を予測する

E. L ガイスト
V. V. ティトフ
C. E. シノラキス
200604

日経サイエンス 2006年4月号

10ページ
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2004年12月26日,一連の津波がインド洋周辺全域の沿岸地帯を襲い,史上空前規模の犠牲者を出した。津波は町や村を全滅させ,数時間のうちに22万5000人以上の命を奪い,少なくとも100万人が路頭に迷った。

この衝撃的な災害は,1つの重要な事実を浮き彫りにした。世界中で沿岸地域の人口が急増すればするほど,津波は今まで以上に大きなリスクをもたらすということだ。また,この津波は,史上最も克明に記録された。これらの記録は今後の津波災害を避けるための手段を探る絶好の材料となった。例えば泥水が海辺のホテルを一呑みにするさまを捉えた観光客のビデオや外洋上を伝播する波を捉えた人工衛星のデータを含めた膨大な情報によって,科学者は津波の予測に関する新たな知見を得た。

一例を挙げるなら,この巨大津波の発生地点だ。これまで発生することはないと考えられていた場所で起こっていた。これによって世界中で巨大津波が発生する危険があると考えられる想定危険地域が拡大された。津波が到達する場所や,陸上での津波の挙動を予測するコンピューターシミュレーションについて,新しい観測結果をもとに史上初めて詳しく検証された。さらにこの津波によって,地震の発生の仕方のわずかな違いが津波の規模と形状に大きな影響を及ぼすことも明らかになった。こうした発見から導かれ,改良された津波予測モデルは,新たな監視・警報システムと連携して,人命を救う助けとなるだろう。