アルツハイマー病の治療薬をつくる

石浦章一
木曽良明
200604

日経サイエンス 2006年4月号

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長寿高齢化社会を迎え,アルツハイマー病の予防・治療への関心が高まっている。アルツハイマー病は認知症(老人痴呆)の一種で,脳の萎縮や軽い記憶障害から始まり,進行すると家族の顔すらもわからないという深刻な状態に陥る病気だ。脳にアミロイドβタンパク質(Aβ)が蓄積し,老人斑とよばれるシミ状の物体をつくることが特徴で,これが発症の原因ではないかと考えられている。

近年,Aβの生成過程にかかわる酵素の働きが明らかになり,これらの酵素の1つ,βセクレターゼを阻害することで,老人斑の形成を抑えられる可能性が出てきた。著者らはAβの前駆体タンパク質がβセクレターゼによって加水分解される遷移状態に着目し,この酵素を高い割合で阻害する薬剤をデザインした。遺伝性アルツハイマー病のモデルマウスを使った実験で,開発されたβセクレターゼ阻害剤にAβ軽減効果があることが確認されている。生体でAβを抑制する効果が認められた初めての実験例だ。