長寿の科学「長生き遺伝子」の秘密を探る

D. A. シンクレア
L. ガランテ
200605

日経サイエンス 2006年5月号

9ページ
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老化は経年変化による疲弊で,修復不能なものなのだろうか? 著者らはそうではないと考えている。生体には防御や修復作用を維持する遺伝子があり,年齢とは無関係に働くので,これらの遺伝子を長期にわたって活性化すれば,健康を維持し,寿命を延ばすことができるというのだ。

寿命に影響を与える遺伝子は動物実験などから多数発見されている。その中で著者ら注目しているのは,サーチュインと呼ばれる遺伝子ファミリーだ。この遺伝子は食物不足など環境のストレス因子に応じて活性化され,細胞修復,エネルギー生産,アポトーシス(プログラム細胞死)などに影響を与える。サーチュインは生体機能の調節役として働いているのだろう。

寿命を延ばす効果が明らかな方法としては,カロリー制限が知られているが,サーチュイン遺伝子の働きは,カロリー制限が寿命を延ばすメカニズムと同様のものと考えられている。したがって,サーチュインの効果を生かした化合物が開発できれば,厳しい食事制限のかわりとなるカロリー制限模倣薬が誕生するかもしれない。

すでに酵母や線虫,ショウジョウバエでサーチュインによる長寿効果が確認され,現在マウスで実験が進められている。哺乳動物での効果が明らかになれば,抗老化薬への期待もますます高まるはずだ。