モンスーンで隆起するヒマラヤ

K. ホッジス
200611

日経サイエンス 2006年11月号

10ページ
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雨による浸食で山が削られるのは当たり前の話だが,もし浸食によって山が隆起しているとしたら…。あり得ないような話がヒマラヤ山脈では起きているようだ。
 
舞台となるヒマラヤ山脈とチベット高原は「ヒマラヤ・チベット造山帯」と呼ばれる。インド亜大陸がのるインドプレートは約4500万年前にユーラシアプレートに衝突し,ヒマラヤ・チベット造山帯ができた。同造山帯の地殻は地球上で最も厚くて70km以上に達する場所もある。その地下深部では,高温高圧によって岩石が部分溶融し,流動層が数百万年にわたって存在しているらしい。
 
一方,夏,ベンガル湾上で発生した熱帯低気圧は北上してヒマラヤ山脈の南斜面にぶつかり,モンスーンの大雨を降らす。この大雨によって,山脈の南斜面が削られると,それが地下深部の流動化した岩石を引き寄せ,岩石層が地表面に押し出されてくる。この急激な隆起によって浸食で削られた分が補充され,山腹は急傾斜を保つ。そのため,次の年,再びモンスーンの大雨が降ると,急激な浸食が起こり,それが再び流動化した岩石を引き寄せて……という具合にサイクルは長い年月にわたって継続しているらしい。