宇宙の暗黒時代を探る

A. ロブ
200702

日経サイエンス 2007年2月号

10ページ
( 1.6MB )
コンテンツ価格: 713

宇宙はビッグバンで誕生し,原子より小さい粒子からなるガスの状態から,銀河が輝く世界ができあった。私たちの手には,ビッグバンから40万年後の宇宙のスナップ写真「宇宙マイクロ波背景放射」の画像がある。また,それから約10億年後の個々の銀河の写真もある。しかし,その間の画像はない。最初の星の光が観測されるまでの間,宇宙は暗黒に包まれ,物質分布の状況を知ることができないのだ。
 
この時期は,ビッグバン後の激変は収まったものの,星々が輝く現在の活気ある宇宙はまだ姿を見せていない。暗黒の時代というと,薄暗い中でゆっくり時間が流れる“劇の幕間”のような印象を持たれるかもしれない。しかし,この時代には実に多くのことが起きていた。最初の混沌とした宇宙を,私たちが今,目にしているさまざまな天体が輝く銀河宇宙にまで進化させたのは,この時代なのだ。
 
手掛かりはある。暗黒時代から漏れ出てくる電波だ。輝く星は存在しなかったが,本当に完全な暗闇だったわけではない。頻繁ではないが,水素ガス内では微弱な波長21cmの電波を発するプロセスが起きていた。エネルギー源は水素原子の運動エネルギーと背景放射だ。暗黒時代が始まったときに比べて現在の宇宙は 1000倍に膨張しているので,暗黒時代の初期に放出された波長21cmの電波は宇宙膨張の影響を受け,地球で観測されるときの波長は210mになる。暗黒時代の終わり頃に放出された電波光子の場合は波長が1?2mに伸びている。
 
こうした電波の信号はテレビ放送や無線通信に使われているアンテナと同じようなものを多数配置した低周波アンテナ干渉計でキャッチできる。現在,複数のグループがアンテナ干渉計を建設中だ。実現すれば,さまざまな波長の電波が観測できるようになるので,異なる時代に発せられた波長21cmの電波を調べられる。これによって現在の銀河宇宙が生まれるまでの様子が見えてくるだろう。