痛みのもとを狙い撃つ新薬

G. スティックス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
200704

日経サイエンス 2007年4月号

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身体がどのようにしてプロスタグランジンを作り出すかを明らかにしたサムエルソン(Bengt Samuelsson)は,1982年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。このホルモン様物質は生体内のさまざまな作用を調節するもので,疼痛や発熱,炎症などを誘発する。こうした生体内作用を抑えるのがアスピリンやイブプロフェンなどの薬だ。サムエルソンは共同受賞したベリストローム(Sune Bergstroom)とともに,スウェーデンにある赤レンガ造りのカロリンスカ研究所で研究していた。この研究所はノーベル生理学・医学賞の選考をしている機関でもある。

カロリンスカ研究所のプロスタグランジン研究は1935年にこの物質を発見してから今日に至るまでの長い歴史があり,近年では,サムエルソンらがプロスタグランジンの生化学的な側面を詳しく解明してきた。いまや評判を落としたCOX-2阻害薬といった既存薬よりも安全性の高い鎮痛薬や抗炎症薬の開発に,サムエルソンらの研究が生かされている。「抗炎症薬の需要は非常に大きい。従来の薬と同じくらい効果があって,副作用が少ない薬剤を開発できるかどうか,それが重要だ」とサムエルソンは話す。

彼は細胞膜に存在するアラキドン酸が酵素によって一連の処理を受けると,プロスタグランジンができることを明らかにした。この結果,体内でさまざまな調節機能を発揮するいろいろなプロスタグランジンが生じる。たとえば,腎臓が十分な量の血液を受け取れるようにするものや,出産時や月経時に子宮の収縮をコントロールするもの,感染やけがに対する防御反応として炎症を引き起こしたりするものがある。

アスピリンやイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬は,プロスタグランジンが作り出される過程の初期段階に働く2種類の酵素の作用をブロックして効果を発揮している。つまり,あらゆるプロスタグランジンができないようにしているのだ。