マダガスカル事件簿
謎の恐竜大量死を追う

R. R. ロジャーズ
D. W. クラウス
200705

日経サイエンス 2007年5月号

9ページ
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身体は左半身を下にして横たわっていた。頭と首は骨盤の方を向いている。死体としてはよくある姿勢だ。腕と脚は解剖学的に見ても正しい位置関係にあるが,よく見ると手と足の骨はずれている。それでも手足を構成するほとんどの部分の骨は残っていて見分けがつく。頭骨も小片に割れてしまった部分もあるが,個々のパーツは互いに近くに散らばっている。興味深いことに,尾の先端は全く見あたらない。この死体のそばには他にも多くの死骸が散乱しており,保存状態は実にさまざまだ。ほぼ完全な死骸もあれば,頭骨だけのもの,肩甲骨だけのものもあり,四肢の骨がたった1本しか見あたらない死骸もある。これらの動物は果たして,この場所で息絶えたのだろうか,それとも死後ここに運ばれてきたのだろうか。さらには,すべての個体は同時期に死んだのだろうか,あるいは長期間にわたって死んだ動物が積み重なったのだろうか。そもそも死因は何だったのか。
 
マダガスカル人と米国人の古生物学者や地質学者からなる私たちの調査チームが,こうした疑問を抱いたのは,2005年の夏にマダガスカル北西部の古い地層の中に大規模な“墓場”を見つけてすぐのことだった。マダガスカル島はアフリカ大陸の南東にある世界で4番目に大きな島で,その表面は赤茶色の土壌に覆われている。私たちはこの島で疑問の答えを求める中で,いくつもの興味深い情報を得たが,謎解きの過程そのものも多くの人の興味をそそるのではないかと思う。