タンパク質の常識を覆す不定形の鎖

西川建
200706

日経サイエンス 2007年6月号

10ページ
( 1.1MB )
コンテンツ価格: 713

タンパク質といえば,それぞれ特有の立体構造をもち,特異的な機能を発揮するといわれてきた。アミノ酸がずらりと連なった鎖が複雑に折りたたまれ,コンパクトな立体構造をとるようになって初めて機能が発揮できる。ところが最近になって,非常に奇妙なタンパク質が次々と見つかってきた。立体構造をとらない部分のあるタンパク質だ。例えば,普通の球状のタンパク質の一部からひらひらとほどけた帯が伸びているような状態なのだ。
 
実験をする際の技術的な難しさから,このひらひらした領域はほとんど無視されてきた。「形(定まった立体構造)と機能は表裏一体」という考え方があったせいで,逆に形の定まらない部分は重要ではないと思われてしまった面もある。しかし,この不定形の部分は,そのタンパク質が結合する相手に巻きつく機能をもつ場合があり,しかも,相手によって巻きつき方が変わる。つまり,複数の相手と結合することを可能にした構造なのだ。
 
さらに,こうした不定形の領域をもつタンパク質は,決して例外的なものではなく,生体にとって根本的な機能をもつタンパク質の1/3を占めていた。この奇妙な構造が,タンパク質の常識を大きく変えようとしている。ここでは,この不定形の部分とそれをもつタンパク質を紹介していこう。