電波はもう古い
光で無線LAN

M. カーベラード
200710

日経サイエンス 2007年10月号

8ページ
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いつでも,どこでも,誰でも,何にでも,ワイヤレスにデータをやりとりできる「ユビキタス通信」を実現するのが,エレクトロニクス技術者の長年の夢だ。その夢にいま大きく近づきつつある。現在,20億を超える人々が携帯電話を持ち歩き,数億人がノートパソコンや携帯端末などのデジタル機器で,Wi-Fi(ワイファイ,電波を使った無線LAN)を介して,メールやファイルをやり取りしている。
 
こうしたWi-Fiユーザーは屋内でも携帯機器を持ち運んで利用するようになってきた。また,設置タイプの従来の電子機器や家電にも無線機能が搭載されるようになり,離れたところから操作できるようになった。さらには,配線なしにはサービスが受けられなかったブロードバンド通信に,ワイヤレスで接続したいと望む声が増えている。
 
しかし,電波の周波数帯域には限りがあるため,Wi-Fiによる通信速度とチャネル容量には限界がある。だから,テレビやオンデマンド映画はもとより,テレビ会議やインターネットの閲覧など,ウェブを介したマルチメディアサービスにおいて,Wi-Fiでは十分な通信速度が得られないのだ。
 
電波に代わる有望な通信方法に,光を使った無線技術がある。光無線LANでは白色光や赤外線(テレビのリモコンにも使われている,目に見えない光)を使ってデータを送る。住宅やビルに引かれた高速ブロードバンド網を,室内に設置したデータポートまで有線で導き,データポートとワイヤレス機器を光で結ぼうというのだ。急速に発展しているこの光無線技術にはいくつかの利点がある。
 
まず,光を使うのでセル(無線サービスの範囲)の大きさを限定できるし,別のセルとの混信は起こらない。しかも,複数のユーザーに対してほぼ無制限の帯域幅を提供できるようになる。また,光は電波と違って壁を透過しないのでセキュリティーは盤石だ。工場や個室が多いオフィスなど,広帯域のユーザーが大勢いる大規模な職場にうってつけといえるだろう。