科学と宗教は対立するのか

L. M. クラウス
R. ドーキンス
200710

日経サイエンス 2007年10月号

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日本の読者には進化論を疑う人はほとんどいないだろうが,一神教の文化圏,特に米国では事情が異なる。知的存在が生命や宇宙を設計したとする「インテリジェント・デザイン説」の“信者”が少なからずいる。神が世界を創造したという「神話」は多くの文化圏に伝わるものの,それが宗教原理主義と結びついて形を変えて出現したとき,“科学的知の基盤”を毀損しかねない影響力を持つ。
 
ローレンス・クラウスとリチャード・ドーキンスはともに科学の擁護者だが,こうした脅威にどう対抗すべきかに関しては,意見を異にする部分もある。クラウスは優れた物理学者であり,学校の理科の時間に進化論をこれまで通り教えるよう主張する一方,創造説など擬似科学的な教育を排除すべきであると,積極的に発言してきた。ローマ法王ベネディクト16世に宛てた2005年の公開書簡では科学と信仰の間に新たな壁を作らないよう求め,バチカンはこれを受けて自然選択を有効な科学理論として受け入れることを再確認した。
 
進化生物学者のドーキンスは科学的論法を傷つけようとするあらゆる試みを厳しく批判している。ただし,科学と信仰の平和的共存にはあまり興味を示してこなかった。彼のベストセラー『神は妄想である』(The God Delusion,邦訳は早川書房)の書名が,宗教的信仰に対する彼の意見を最も端的に表している。
 
昨年末,科学と宗教の衝突について議論する会議がサンディエゴにあるソーク生物学研究所で開かれ,この2人が意見を交換した。この記事はその内容を再構成したものだ。2人は“敵”と戦うためのそれぞれの戦術を説明し,宗教心にあつい人々を相手に科学について語るべきなのか,語るとしたらどのように語るのかなど,多くの科学者が直面する問題について考察している。科学者が語る目的は科学を教えることなのか,宗教の誤りを示すことなのか。科学と宗教という2つの世界観は互いを豊かにできるのか。宗教は本質的に悪なのか?中身の濃い議論が続いた。(編集部)