スペシャルリポート:
変貌する核の脅威
増える核保有国

M. フィシェッティ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
200802

日経サイエンス 2008年2月号

6ページ
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核爆弾を都市で爆発させれば無数の死者と破壊がもたらされる。しかし,社会はそのことを忘れがちだ。米国が2発の原爆を日本に投下してから60年以上,米国とソ連(現ロシア)の冷戦が終結して15年以上が過ぎたが,核戦争を回避しようとする政治的努力は失われつつある。
 
米国とロシアがミサイルで攻撃し合う可能性は大幅に低下したものの,完全に消滅したわけではない。近年,これとは別の形で核の対立の恐れが高まってきた。情報機関筋によれば,中国は保有する多数のミサイルの標的を米国へと変更しつつある。イランはウラン濃縮設備を利用した核兵器開発の疑念がもたれている。
 
インドは地上,空中,水中からの核兵器発射能力を増強しつつあり,対立関係にあるパキスタンも同様だ。北朝鮮は2007年9月,核施設を再稼働不能にする「無能力化」を示唆したものの,協議当事国は不信感を抱いている。同国の長距離ミサイル試験は今も継続されている。変貌する核の脅威は,多くの問題を提起している。
 
現在の核兵器は広島に投下された原爆よりはるかに大きな殺傷能力を持つ。マンハッタン上空で1メガトン級の核爆弾が爆発した場合を想定した SCIENTIFIC AMERICAN誌のシミュレーションでは,爆風や熱線,放射線によって数百万人の死者が発生するという結果が出た。他の大都市でも同程度の被害が想定される。