化石燃料から太陽エネルギーへ
米国の大転換構想

K. ツヴァイベル
J. メーソン
V. フセナキス
200804

日経サイエンス 2008年4月号

11ページ
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 エネルギーをめぐる世界情勢は急速に変化している。今年1月,原油価格は米市場で1バレル100ドルの史上最高値を更新。経済発展を続ける中国は米国に次ぐ世界第2位の石油消費国へ。さらにインドでも,原油の輸入依存度が7割を超えた。海外の油田開発をめぐる争いが激化する一方,大気汚染や温暖化ガスによる環境問題も解決策を見いだせないまま,議論が続いている。
 こうした状況に対し,著者らは「米国は自らを開放するために大胆なプランを必要としている」と述べる。その大胆なプランとは,太陽光をエネルギーの主軸とするソーラー発電への大転換構想だ。
 著者らのプランでは,米国南西部の7万8000km2(北海道とほぼ同じ面積)の広大な公有地に多数の太陽電池をつなげたモジュールを配備。高圧直流送電網を使って全米各地に電力を供給する。日中の余剰電力は圧縮空気エネルギーとして地下貯蔵施設に蓄え,夜間消費に備える。さらに太陽光発電と並行して,集光型太陽熱発電所も建設する。計画通りに実現すれば,2050年には電力の69%,総エネルギーの35%をソーラー発電で賄える計算だ。2100年には国内エネルギー自給率100%を目指す。
 もちろん,モジュールの効率の改善や大量生産によるコスト低下など,さまざまな技術的ハードルはあるが,最大な課題は,インフラ整備とコスト面での競争力を持たせるために投入する補助金の捻出だ。著者らはソーラー発電への大転換には4200億ドルが必要としている。果たしてこの金額を調達することは可能なのか。著者らは次のように答えている。
 「4200億は確かに巨額だが,現在の農産物価格支持制度ほど多額ではない。…米国は,国際エネルギー紛争に起因する政策や予算の問題から開放される。投資額は膨大だが,エネルギー源である太陽光はタダだということを忘れてはいけない」。