救援活動に科学技術を生かす

S. フィンク
200804

日経サイエンス 2008年4月号

8ページ
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今日,世界の災害現場や紛争地域で行われている救援活動でさまざまな先端技術が活躍している。例えば災害の規模を早く正確に把握したいとき,人工衛星と情報技術が被災地の画像を広範囲にわたって提供してくれる。さまざまな情報源から入手したデータをデジタル地図に統合する「地理情報システム(GIS)」も有効だ。

2004年のスマトラ島沖地震では,避難民,負傷者,死者,行方不明者の数,さまざまな救援団体の活動エリア,病院や診療所,薬局の位置,それぞれの地域で発生する可能性が最も高い病気などに関するさまざまな情報を載せたGIS地図が,救援活動のさまざまな場面で使われた。

人道支援のための情報基盤も整い始めた。各国の宇宙機関は災害時の衛星画像を無償で公開しているし,災害に関連した地図や情報を提供するウェブサイトも現れた。

紛争で生じた難民や犠牲者の情報収集にも,多くの技術が役立ってきた。1990年代には衛星画像と航空写真によって,ボスニア・ヘルツェゴビナで何百もの集団墓地が発見された。その後の調査とDNA照合システムによって,1万2000人以上の犠牲者の身元が確認された。ボスニア東部の町スレブレニツァで起きたセルビア人勢力によるボスニア系イスラム教徒の大虐殺をセルビア政府は長年否定してきたが,これらの証拠を受けて虐殺の事実を認めるに至った。

科学的・技術的進歩によって救援活動は大きく前進したが,新手法の利用について課題はまだ多く残っている。 救援活動に携わる人々は今も,技術のもっとも効果的な利用法を模索している。