短期集中連載:
第2回 カミオカンデとスーパーカミオカンデ
──物理学を変えた四半世紀
素粒子論の標準モデルを超えて

中島林彦
協力:戸塚洋二
200805

日経サイエンス 2008年5月号

11ページ
( 3.8MB )
コンテンツ価格: 407円 (10%税込)

Please tell me how ν's get MASS.
 素粒子理論の標準モデルの柱となる電弱統一理論の研究でノーベル物理学賞を受賞したS. グラショウ博士は2003年5月,飛騨山中の地下1000mにある素粒子ニュートリノ観測施設スーパーカミオカンデを訪れ,観測室の扉にこんな言葉を書き残した。訳すと次のようになる。「どうか私に教えてほしい。どのようにしてニュートリノ(ν)は質量を持つのかを」。
 1980年代,小柴昌俊東京大学教授,戸塚洋二助教授(いずれも当時)らが神岡鉱山(岐阜県飛騨市神岡町)に建設した素粒子実験施設カミオカンデは超新星と太陽からのニュートリノの観測に成功し,ニュートリノ天文学を拓いた。小柴が退官し,後を継いだ戸塚らがカミオカンデのすぐ近くに建設した後継装置スーパーカミオカンデはニュートリノに質量があることを明らかにした。これにより30年来不動のものであった素粒子物理学の標準モデルが見直されることになった。
 ニュートリノが持つ質量は他の素粒子と比べても桁違いに小さい。しかしゼロではない。その非常に微小な質量の存在によって,ニュートリノが走っているうちに種類が変わるという不思議な現象「ニュートリノ振動」が起きる。そして超微小の質量は宇宙誕生直後に存在した超重量級の量子の存在を予言し,標準モデルを超える大統一理論への扉を開いた。素粒子物理学の革新は今まさに進みつつある。