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マグロと言ってもその種類はさまざまあるが,最高級魚として人気が高いのはクロマグロだ。このクロマグロに今,絶滅の危険が迫っている。
クロマグロはかつて米国ではイヌやネコの餌にしかならないと考えられていたが,寿司や刺身の人気が世界的に広がるにつれ,トリュフやキャビアと同じくらい高級な食材になった。沖合いで群れをなして泳いでいるクロマグロが高値で売れるとなれば,マグロ漁が盛んになるのは当然だ。その結果,クロマグロの数は絶滅が危ぶまれるほど激減した。国際的な漁業管理機関は漁獲量を厳しく設定しておらず,密漁も横行している。
クロマグロは減少したが,需要は今も増え続けている。需要を満たすために養殖も行われているが,そのほとんどは天然の若いクロマグロを捕獲していけすに入れ太らせてから出荷するというもので,繁殖可能なマグロの数を減らし,絶滅を加速している。
クロマグロを救うには,人工的な繁殖・育成方法を確立して実行するほかなさそうだ。すでに日本や欧州の研究グループは繁殖実験を進めている。オーストラリアの企業は環境条件を自在に制御できる水槽の中で産卵をコントロールし,稚魚を商業規模で生産しようとしている。
本文では,クロマグロに関する資源管理状況や現在開発が進められている人工繁殖技術について紹介する。