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2001年11月12日午前11時,岐阜県北部で小地震が起きた。震源は飛騨市神岡町茂住の地下1000m。そこには東京大学宇宙線研究所の戸塚洋二教授(当時)らが心血を注いで建設した世界最大のニュートリノ観測施設スーパーカミオカンデがあった。
スーパーカミオカンデは5万トンの超純水を満たした円筒形の大型タンク。内壁全面に,巨大電球形の超高感度光センサー,光電子増倍管が取り付けられているが,底面の増倍管の1本が何の前触れもなく爆縮,生み出された衝撃波で近くの増倍管が連鎖爆縮し,その振動が地震波として地中に伝わった。ほんの数秒で約8000本の増倍管が破壊され,被害総額は約20億円に達した。
スーパーカミオカンデの停止は世界のニュートリノ研究の停滞を意味した。研究グループの間に悲観ムードも漂ったが,研究代表の戸塚教授の思いは「つぶれてたまるか」だった。事故翌日,その決意を声明として発表,再生への第一歩となった。約1年後,奇跡的ともいえる短期間で観測が再開されたとき,大ニュースが飛び込んできた。