追悼
戸塚洋二先生──かくて伝統はつくられた 

中島林彦(編集部)
200810

日経サイエンス 2008年10月号

14ページ
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 世界のニュートリノ研究を引っ張ってきた東京大学特別栄誉教授の戸塚洋二先生は7月10日,がんとの長く厳しい闘いの末に亡くなられた。先生は師,小柴昌俊氏のもとで素粒子実験施設カミオカンデの建設を陣頭指揮し,世界で初めて超新星ニュートリノを観測,師のノーベル賞受賞に貢献した。さらに自らが中心となってカミオカンデ後継のスーパーカミオカンデを建設,ニュートリノの質量の発見という素粒子物理学の理論的枠組み「標準モデル」に見直しを迫る研究成果をあげた。東京大学から高エネルギー加速器研究機構(KEK)に移ってからは機構長として日本の素粒子物理学研究全体の舵取りをした。ノーベル賞受賞が目前とも言われていた。師の小柴昌俊氏など先生とゆかりがあった人々による追悼の言葉で先生の人生を振り返る。追悼文集では次の4人の方々に寄稿いただいた。スーパーカミオカンデを先生から託された東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設長の鈴木洋一郎氏,1998年に岐阜県高山市で開かれたニュートリノ国際会議で研究グループを代表してニュートリノ質量の発見を発表した東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章氏,東京大学物理学科の同級生で友人だった日立製作所フェローの外村彰氏,先生の夫人の戸塚裕子氏。