土壌を守る不耕起農法

D. R. ハギンズ(米農務省農業研究部)
J. P. レガノルド(ワシントン州立大学)
200811

日経サイエンス 2008年11月号

8ページ
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 農地のことを耕作地とも呼ぶように,農業にとっては「耕す」という行為はあたりに当たり前のことだ。だが,種をまく前に土壌を掘り返すことが,土壌が流失する大きな原因となっている。土壌がなくなってしまうと,そこではもはや農業は営めない。持続可能な農業にするにはどうすればよいか? その答えの1つが耕すのを止める,つまり不耕起農法だ。米国や南米・中米諸国では,奨励策の後押しもあって不耕起農法が少しずつ広がりつつある。
 耕すことを止めた畑からは,流出する土壌は激減する。地面に染み込む前に地表を流れてしまう水も減る。収穫までに必要な農作業の回数そのものも減る。耕した畑に比べると不耕起農法の畑は土壌生物の種類も多い。だが,種まきに特殊で高価な農耕機が必要になる,少なくとも最初のうちは収量が安定しない恐れがある,除草剤の使用量が増えるなどのデメリットもある。こうした点もあってかアジアやアフリカの貧しい国では,なかなか不耕起農法が広まらない。本来ならば,保全農法を最も必要としているのはこうした国々なのだ。