DNAコンピューターで「三目並べ」

J. マクドナルド(コロンビア大学)
D. ステファノビッチ(ニューメキシコ大学)
M. N. ストヤノビッチ(コロンビア大学)
200902

日経サイエンス 2009年2月号

10ページ
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 現代の化学者にとってDNAの構造はたいして面白いものではない。生命にとってのDNAの重要性はよく知られているが,化学者にとってはDNAは何の役にも立たない単なる均一な2重らせん構造の分子にすぎない。この分子が多くの可能性を秘めたまったく新しい研究分野の基本材料と聞いたら,びっくりするだろうか。その分野は合成化学や酵素学,構造ナノテクノロジー,計算機科学など多岐の分野にまたがっている。
 私たちはその新分野での成果として,水溶液中で動作可能な分子版の論理ゲート,“DNAゲート”を構成した。DNAベースの演算モジュールを作る最終目的は,ナノサイズの機械を開発することだ。その機械は生体内で動作し,状態を読み取って適切な決定を行い,投薬や特定の細胞を殺すといった応答をする “DNAドクター”だ。
 私たちは「三目並べ」の完全無敵なオートマトン(自動機械)を作ることで,DNAゲートの能力の一端を証明した。人間は,自らの指し手を決めたら,その手を打つマス目に対応するDNA鎖の溶液をすべてのマス目に加える。すると,DNAコンピューターはある1つのマス目を光らせて次の手を示す。DNAゲートの判断は正確きわまりなく,人間はちょっとでもミスを犯せば必ず負けてしまう。