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2009年2月時点で,イランは自国の核計画に沿ってウラン濃縮能力を急速に拡大している。2008年11月にインドのムンバイで起きたテロはインド・パキスタン間の核戦争の危機をこれまで以上に高めた。2006年10月9日に初の核爆発実験を成功させて核保有国(核クラブ)に仲間入りした北朝鮮は,少なくとも6発の原子爆弾を造るのに足りる兵器級のウランを分離ずみだとされる。
核の緊張をやわらげる希望はある。2008年末までに180カ国が包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名している。CTBTは核兵器の爆発実験を含むすべての核爆発を禁止するものだ。1996年9月に国連総会で採択され,当時のクリントン米大統領をはじめ多くの国のリーダーが即座に署名したこの条約は,核保有国による核兵器のさらなる開発を制限するとともに,非保有国が核兵器の製造に乗り出すことを防止するものだ。
CTBTはまだ発効していないものの,米国やロシアなどの署名国は,国連で採択されて以来,核実験の一時停止(モラトリアム)を続けている。1996年以降に核実験を実施した3つの国,インドとパキスタン,北朝鮮は条約に署名していない。
米国では,条約そのものに根強い反対があるものの,核実験は停止されている。複数の上院議員がCTBTに反対した理由は,秘密の核実験を探知して条約違反を正確に指摘する手だてが存在するかどうか確証がもてなかったからだ。しかし,私たちの考えでは,監視にからむこうした心配は数年前からすでに根拠を失っている。地下,地上を問わず,軍事的に意味ある核爆発実験が世界中のどこで起こってもそれを探知し,鉱山崩落や地震など核とは無関係の現象と区別する優れた手法が開発ずみだ。
例えば,2006年に実施された北朝鮮の地下核実験の爆発規模は1キロトン(TNT火薬1000トンに相当)以下だったが,即座に探知され,特定された。探知能力はすでに実証されており,監視技術は絶え間なく改良されているから,秘密の核実験への心配はもはやCTBT反対の根拠になりえない。