サイエンス・イン・ピクチャー
すばるが見た渦巻銀河M33
銀河考古学の扉を開く

中島林彦(編集部)
協力:有本信雄(国立天文台)
200906

日経サイエンス 2009年6月号

6ページ
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ハワイ島の高峰マウナケア山頂にある国立天文台のすばる望遠鏡。稼働から10年を迎えた今も最先端の観測をしている。このほど10周年を記念して1枚の銀河の画像が公表された。
 天の川銀河は小さな星の集団をいくつも従えている。16万光年先の大マゼラン雲や20万光年先の小マゼラン雲などが代表例だ。そして230万光年先に,天の川銀河とほぼ同規模の渦巻銀河,アンドロメダ銀河(M31)がある。このアンドロメダ銀河と天の川銀河を盟主に,50近くの矮小銀河が集まり,差し渡し約600万光年の局所銀河群を形成している。
 今回,国立天文台が公表したのは局所銀河群に属する渦巻銀河M33(さんかく座星雲)の画像。天の川銀河やアンドロメダ銀河と比べるとM33はそれらの1/10程度のサイズだが,局所銀河群では“ナンバー3”の座にある。天の川銀河からの距離は250万光年でアンドロメダ銀河に次いで近い。しかもM33は銀河円盤を横方向からではなく,真上に近い方向から眺められる位置にある。だから銀河円盤上の,どの位置にどのような星が存在するのか一目瞭然で,渦の構造もよくわかる。こうしたさまざまなことからM33は「どのように銀河が成長してきたのかを探る学問,銀河考古学の研究素材としてうってつけだ」と国立天文台の有本信雄教授は話す。