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細胞表面には細胞外の刺激を受け取る「受容体(レセプター)」という構造がある。受容体の活性部位にホルモンや神経伝達物質などの生体分子(リガンド)がぴったりと取りつくと,細胞内のシグナル伝達系の連鎖反応が始まり,細胞の活性が変化する。従来の薬のほとんどは受容体の活性部位をターゲットにしており,生体分子に代わって活性部位に結びつくことで,シグナル伝達を阻害したり増強したりする。
このタイプの薬がシグナル伝達のオン・オフスイッチの役割をするのに対し,近年注目されているアロステリック医薬は微妙な調節が可能だ。アロステリック薬は受容体の活性部位とは別の場所に取りつき,受容体の形状を変化させることで活性の度合いを調節する。
アロステリック薬が期待される大きな理由は副作用の回避だ。1つの受容体にはわずかに形状の違うサブタイプがあり,どのリガンドが取りつくかは組織によって異なる。従来の薬は受容体のサブタイプを見分けることなく取りついてしまうため,自然には起こらないような反応が生じることがある。一方,アロステリック薬はサブタイプが違うと結合する場所がみつからず,反応は起きない。この「効かない」作用を利用すれば,これまで安全な薬が作れなかった病気にも治療薬が見つかるかもしれない。