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現在,世界で暮らす68億の人々は,南米大陸に相当する広さの土地を農業に使っているという。世界人口は2050年までに95億人になると予想されており,これだけの人口を養うにはさらにブラジル大の土地が必要だ。
問題はそれだけにとどまらない。現代の農業では農地開発による森林破壊,農薬による水の汚染,大型耕作機の運転や輸送のため化石燃料の大量消費など,地球に与える被害も深刻になっている。改革が必要なのは明らかだ。著者が提案するビル型農場ならば,こうした問題をすべて解決できるという。
著者は,都市部に1ブロック(0.02平方km)ほどの広さの土地に30階建てのビルを建て,厳密な環境コントロールのもと作物を育てることを想定している。とてつもない計画に聞こえるかもしれないが,すでに屋内型農場は世界各国で広がりを見せており,今ある技術で十分実現可能だという。
既存の屋内栽培技術や矮性(背丈の低い)作物を使えば,高い密度で作物を栽培できるし,環境をコントロールするので1年中数回にわたり収穫できる。簡単に見積もると,上記のビル型農場でおよそ10平方kmの屋外農場に相当する作物を収穫できる計算だ。
この農場の運営には水とエネルギーが必要になるが,都市下水を浄化して灌漑に利用し,そこで出た汚泥や植物廃棄物を燃やしてエネルギーを得ることで解決できる。さらに,農場を都市部に設けることで,食品の輸送にかかるエネルギーやコスト,損失を減らせる。
すでに世界中の複数の都市の都市プランナーから申し入れがあり,実現に向けた動きも始まっている。この計画の詳細に加え,日本でも広がりを見せている植物工場の現状について紹介する。