石油資源を搾り出す

L. マウゲーリ(伊エニ社)
201003

日経サイエンス 2010年3月号

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 世界の石油生産が間もなく減り始め,数十年でなくなるという予測は悲観的すぎるかもしれない。現在,油井から採掘できる石油は地下に存在が知られている量の35%程度だが,先進技術のおかげで回収率が向上し,2030年には50%に高められる。資源の新発見もあって産出量は増え,石油はあと1世紀はもつだろう。
 カリフォルニア州のセントラルバレーで,8000基を超すホースヘッドポンプ(昔ながらの油田労働者はこの装置をそう呼ぶ)がゆっくりと上下に動き,地下から石油を汲み上げている。その全域を走るパイプラインは,ここが過去の遺跡ではないことを示している。だがこの光景だけでは,ここカーンリバー油田が過去数十年の悲観的な予測を覆して生き残ってきた技術的理由は,専門家でもうかがい知れない。
 カーンリバー油田の原油は粘りけが非常に強いので,1899年の発見当時,アナリストたちはその10%しか取り出せないと考えた。そこそこの生産を40 年以上続けた後の1942年,採掘可能な石油は5400万バレル(1バレルは約160リットル)と推定された。その時点での累計産出量2億7800万バレルに比べるとごくわずかだ。しかし「その後44年間の産出量は5400万ではなく7億3600万バレルとなり,そしてなお9億7000万バレルが残っている」と,エネルギーの権威アデルマン(Morris Adelman)は1995年に指摘した。ところが,この予測さえも間違っていることがわかった。2007年11月,同油田の事業主である米石油大手シェブロンは累計産出量が20億バレルに達したと発表した。現在,カーンリバー油田はなおも1日8万バレル近くを産出しており,カリフォルニア州は残存資源量を約6億2700万バレルと見積もっている。
 シェブロンは1960年代,地下に水蒸気を注入するという当時としては新しい技術によって,生産を著しく増やし始めた。その後,蒸気注入の継続とともに,新たな探査手法と掘削装置が,同油田を豊かな石油をもたらす「打ち出の小槌」に変えた。
 一般には,油田の産出量は「ハバート曲線」として知られる釣鐘形の軌道をたどり,既知の石油の半分が採掘・回収された時点で産出はピークに達するとされる。しかし実際には,世界のほとんどの油田が時とともに復活した。ある意味で,技術こそが本当の「打ち出の小槌」なのだ。
 多くのアナリストが現在,世界の石油生産が数年でピークに達し,その後はハバート曲線をたどって減ると予測している。しかし私はそうした予測が間違いだったと将来に判明すると確信している。過去の「ピークオイル」予測が誤っていたのと同様だ。
 新しい探査法によって,地球の秘密の多くが明らかになった。そして採掘技術の飛躍的進歩によって,かつては掘削が経済的に見合わなかった場所からも原油を取り出せる道が開けてきた。先進的な探査・採掘法のおかげで,向こう数十年間は石油産出量が増え続け,石油供給は少なくともあと100年は可能だろう。
 真の問題は,受け入れがたい消費慣行によって浪費することなく,そして何よりも地球の環境と気候を危険にさらすことなしに,残された石油をいかに使うかということだ。