別の宇宙にも生命は存在する!?

A. ジェンキンス(米フロリダ州立大学)
G. ペレス(イスラエル・ワイツマン科学研究所)
201004

日経サイエンス 2010年4月号

9ページ
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 宇宙の「宇」は天地四方つまり空間全体を,「宙」は往古来今(過去と未来)つまり時の流れ全体を表す。「宇宙」は時空すべてを意味することになる。これは物理学的にみても正しい表現かもしれない。私たちは時空の中の存在なので宇宙の外に出て行くことはできない。しかし,「宇宙の外」について考えをめぐらすことは自由だ。宇宙を1つの球と見立てれば,もしかしたら,その外側には無数の球(宇宙)が存在しているかもしれない。
 実際,近年の宇宙論研究によって「私たちの宇宙」とは別に,無数の宇宙が存在する可能性が示されている。別の宇宙では物理法則が違っていてもおかしくはない。例えば物質を構成する素粒子(クォーク)の質量が違っているかもしれない。私たちの宇宙には4種類の力,重力と電磁気力,クォークどうしを結びつけて陽子や中性子を形作る強い力(強い核力),クォークなどの種類を変える作用を持つ弱い力(弱い核力)があるが,別の宇宙では3種類しかないかもしれない。
 もし,そんな宇宙が存在したとして,そこに知的生命がいて私たちと同じように別の宇宙の知的生命に考えをめぐらせるようなことはあるだろうか? 前提となるのは,物理法則が違っても,生命を生む前提となる地球のような惑星が存在するかどうか,その地球型惑星に生命の“素材”となる炭素のような元素が安定的にするかどうかということになる。
 著者は2人の気鋭の宇宙論研究者で,そんな別宇宙における生命の可能性を理論的に探ってみた。その結果,私たちの宇宙とは違って弱い核力が存在しなかったとしても,星が形成され,その星が爆発してさまざまな元素が生み出され,それらが宇宙にまき散らされ,地球型惑星ができることがわかった。またクォークについて,私たちの宇宙とは違った質量をもつ場合でも,一定の条件を満たすなら,生物の素材となる炭素に似た元素が安定的に存在できることがわかった。