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南米チリのアンデス山脈にあるアタカマ高地で日米欧などが協力して世界最大の電波望遠鏡「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」(ALMA)を建設している。アタカマ高地は富士山頂より約1200mも高い標高約5000m。山手線内とほぼ同じ広さの荒野に直径12mのアンテナ54台,同7mのアンテナ12 台の合わせて66台を分散配置する。 それらを一斉に同じ方向に向け,各アンテナがとらえたデータを合成することで,すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の約10倍の解像度で電波天体を観測する。建設費は総額約1200億円。全面稼働は2012年の予定だ。
66台のアンテナのうち欧米はそれぞれ12mアンテナを25台,日本は12mアンテナ4台と7mアンテナ12台の合わせて16台を作る。日本の16台はひとまとまりになってALMAのサブシステムを構成,天体像の歪みを補正し,天体の電波強度の測定精度を向上させるのに中心的役割を果たす。愛称は「いざよい(十六夜)」だ。「いざよい」は兵庫県高砂市にある工場で組み立てられている。12mアンテナ4台は2007年秋までに国内での作業が終了,分割して南米に船で送られ,標高2900mにある山麓施設で組み立てられた。08年春には,うち1台が欧米に先駆けALMAのアンテナの中で最初に試験稼働した。現在,工場では7mアンテナの製造が大車輪で進んでいる。
ALMAは技術的に大きなチャレンジだ。観測するミリ波とサブミリ波のうち,ミリ波は電波天文学の主流で,日米欧は十分な観測実績と技術蓄積を持つ。一方,サブミリ波は星や惑星系,銀河などの誕生の謎を探る上でカギを握る波長域でありながら,本格的な観測がされていない未開拓の領域だ。