対談「形の容貌(かたち)を解剖する」

小島定吉(東京工業大学)
茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所)
201008

日経サイエンス 2010年8月号

7ページ
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 今年3月,日本が誇るブランド,イッセイミヤケがパリコレクションで披露した服のテーマは,「ポアンカレ・オデッセイ」だった。同ブランドのクリエイティブディレクター,藤原大さんが,ポアンカレ予想の証明に多大な貢献をした米国の数学者,サーストン(William P. Thurston)博士に直接に会いに行き,着想を得たという。
 藤原さんにポアンカレ予想と,その基本にあるトポロジーを手ほどきしたのが,数学者で東京工業大学教授の小島定吉さんだ。今号の対談ではその小島教授に,トポロジーの魅力について語って頂いた。
 長年数学者を悩ませ続けてきたポアンカレ予想とは,そもそもどんなものなのか。サーストンがもたらした転換点とは何か。そしてロシアの数学者ペレルマン(Grigori Perelman)博士はなぜ誰もできなかった証明をやってのけたのか──。そこには同業者だからこそわかる,優れた着眼と不屈の勇気があったという。
 日ごろ漠然と眺めている「ものの形」も,数学の目で突き詰めれば,新たな何かが見えてくる。5角形の形はどれだけあるか。形が「似ている」と「似ていない」との違いはどこにあるのか。頭に浮かぶモヤモヤとした疑問を具体化し,論理が通った形に整理していく数学の醍醐味を,小島教授自身の研究を通して紹介する。