覆った定説
ネアンデルタール人は賢かった

K. ウォン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
201009

日経サイエンス 2010年9月号

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 英ブリストル大学の考古学者ジルホー(Joao Zilhao)は過去20年,ネアンデルタール人を研究してきた。ネアンデルタール人は私たち現生人類に最も近い絶滅人類で,ユーラシアを20万年以上にわたって支配した後,約2万8000年前に忽然と消えた人々だ。
 ネアンデルタール人の認知能力が現生人類にどれだけ近かったのか,この分野の専門家は長らく議論してきた。議論の的は,少数のネアンデルタール人遺跡から装身具などシンボル(表象,象徴表現)の利用をうかがわせる遺物が見つかっていたことだ。シンボルの利用は現生人類の行動を特徴づける要素だ。ジルホーらはネアンデルタール人自らがこれらを創作し,現生人類が約4万年前にヨーロッパに到着したのはその後だったと主張する。これに対し批判派は,これらの品は現生人類が作ったものだと考えている。
 しかし,この論争に決着をつけそうな発見が,ジルホーらによって今年1月の米国科学アカデミー紀要に報告された。スペインの2つの遺跡から,顔料で着色された5万年近く前の貝殻が見つかったのだ。現生人類がヨーロッパに進出するよりも1万年前のものだ。新発見の意味について,ジルホーに聞いた。

再録:別冊日経サイエンス194「ゲノムと化石が語る人類の起源と拡散」